私たち広告業界の人間は毎年この時期に発表される「昨年の日本の広告費」が気になって仕方ありません。
このデータは、毎年日本最大の広告代理店である、株式会社電通が発表しています。
媒体別・業種別の広告費データが出ますので、各産業へのアプローチ傾向がわかり非常に助かっています。
2月23日に2015年度版が電通のニュースリリースより発表されていますので、今回はその内容で気になる点をまとめてみました。
なお、ニュースリリースは下記リンクより見ることができます。
株式会社電通 ニュースリリース 「2015年 日本の広告費」
■ インターネット広告媒体費 9,194億円(前年比111.5%)
※うちリスティング・DSPなどの運用型広告費 6,226億円(前年比121.9%)
■ インターネット広告制作費 2,400億円(前年比105.5%)
と、インターネット広告業界は非常に堅調に成長を続けているのがわかるのですが、媒体費の伸びに比べて広告制作費の成長は鈍化しています。
これは広告インフラを提供する会社は成長していますが、広告制作を行う会社の利益率は悪化している傾向にあるという事です。
この制作単価低下の流れは毎年続いており、より価格競争が激しくなったことを表しています。
また、PC市場からスマホ市場へ広告市場が移行していることから、案件数が増加しつつも制作単価の減少を引き起こしてると思われます。
私たちのように広告販売だけでなく、自社で制作を行っている企業としては、他人事ではありません。
まだまだ累計ではインターネット広告市場を上回る一大市場である紙広告分野は、非常に厳しい状況に立たされています。
■ 折込広告 4,687億円(前年比95.3%)
■ ダイレクトメール 3,829億円(前年比97.6%)
■ フリーペーパー・フリーマガジン 2,303億円(前年比99.4%)
折り込み広告は新聞発行数の減少と連動しています。一方、DMの落ち込みはウェブマーケティングの成長と反比例関係にありそうです。
しかし、一概にダイレクトメールやフリーペーパーと比較しウェブマーケティングが優れているとは限りません。
しっかりとターゲットを理解し、効果的に展開していくことが最も重要です。今後、超高齢化社会を迎えるにあたり効果的な媒体選定はより重要になっていくでしょう。
「情報・通信」にあたるオンラインショップやオンラインゲーム市場は前年比105.1%と堅調に成長しています。
事実、私たちの仕事と近い部分で、通販サイトの需要はいまだ堅調に成長している実感を受けます。
一方、従来業界をけん引してきた「教育」「金融」「自動車」「家電」など大分野は軒並み落ちています。
消費税増税前の駆け込み需要に対する反動も大きいでしょうが、中小分野が今後引っ張っていかなければならない分野だろうと感じます。
ここからは個人的な見解になりますが、インターネット広告分野はまだまだ広告市場をけん引し、成長していくと思います。
しかし、インターネット広告市場もずいぶん飽和してきており、広告費も黎明期よりも高騰してきています。
ユーザーが使用するデバイスがPCからスマホへ移行してきたこともあり、今後は今までなかったメディアミックスなどの戦略による単価上昇も考えられます。
例えば、デジタルサイネージ看板とスマホを連動させた広告や、リアルイベントとスマホを連動させた試みなど色々とやり方の幅が広がってきています。
また、超高齢化社会に向けて改めて紙広告とインターネットとのメディアミックスのやり方を模索するのも有効かもしれません。
大きく世の中が変動していく中で、自社のターゲットにあった手法を改めて見つめなおしてみるのも必要かもしれませんね。